「賃上げのジレンマ」

 厚生労働省の諮問機関である中央最低賃金審議会の小委員会は、2024年度の最低賃金の目安を全国平均で時給1,054円にすると決定しました。1,000円の壁を越えた前回賃上げから、約50円の引き上げとなります。政府はおよそ10年後にはこの最低賃金を1,500円としたいとする方向性も打ち出しています。これは中小企業にとっては難しい選択となるのではないでしょうか。原油高、原材料高、円安、政情不安などによるコスト上昇を、自社の商品やサービスに十分に価格転嫁できないという実情があるからです。物価上昇率は前年比で3%近い伸びとなり、実質賃金が下がっている中、賃上げは、従業員の生活を守るうえでとても重要ではありますが、経営をさらに圧迫するリスクとなります。それでも、賃上げをしないと人材の採用どころか維持も難しくなってきます。人は一番の財産であるだけに、まさしくジレンマです。対策として、多くの企業が価格転嫁、人件費以外の経費削減、業務効率化による収益力の向上に取り組んでいますが、賃上げ促進税制等の優遇や補助金等もぜひ有効活用してゆきましょう。また、賃上げ以外で(お金をかけないで)従業員満足度を向上させる取組もますます重要となります。社員の幸福度を上げる取組は工夫すればいろいろあります。前向きに取り組んでゆきましょう。